こんにちは、アロマセレクトです。 アロマセレクトでは、企業さまからのご依頼だけでなく、個人のお客様からの蒸留依頼も承っています。これまでに、杉やヒノキの鉋屑(かんなくず)、酒樽の端材、お茶の葉、い草など、さまざまな素材を蒸留してきました。今回は、千葉県のお客様よりご依頼いただいた「クスノキ」の蒸留ストーリーをお届けします。【クスノキ(樟)とは?】日本の暮らしを支えてきた高木クスノキの精油は、主に九州地方で生産されています。佐賀県の「県の木」であり、日本建築に使われる「欄間(らんま)」の原材料としても有名です。実は、富山県が誇る「井波彫刻」で使われるクスノキも九州産が多いのだそうです。井波彫刻協同組合HP https://inamichoukoku.jp/いなみ木彫りの里 道の駅いなみHP http://kibori.co.jp/クスノキは、となりのトトロの「トトロの森」にも登場するような、樹冠が大きく丸く広がる存在感のある高木です(モクレン類クスノキ目クスノキ科クスノキ属)。古くからこの木に含まれる「結晶」は樟脳(しょうのう)と呼ばれ、天然の防虫剤として日本の暮らしを支えてきました。また、耐久性が高いため建築や仏具、欄間にも重宝されてきた、私たちにとって非常に馴染み深い樹木です。【ご実家の思い出を香りで残したい】富山の屋敷林に通じる、木と人との境界線今回のご依頼は、ご実家のお庭にあるクスノキを剪定するにあたり、「その幹を蒸留して香りを残したい」というものでした。私たちの拠点である富山県でも、古くから雨風や強い日差しを遮るために、お家の周りに樹木を植える「屋敷林(カイニョ)」の文化があります。 県西部などでは、住宅の修繕に使う杉やヒノキ、果実を楽しむ栗や柿、薬草や食卓を彩る山椒や南天などが植えられており、樹種を見れば「家主がどのように木と付き合ってきたか」が分かります。今回、クスノキの蒸留依頼をいただいたとき、私は「きっと広くて大きなお庭で、ご家族の歴史を見守ってきた記念樹なのだろうな」と想像が膨らみました。同時に、技術者としては「クスノキ=一筋縄ではいかない工程がある。果たしてうまくいくか」という緊張感もありました。実は過去に一度クスノキを蒸留した際、蒸留機の中で樟脳の結晶が詰まってしまい、大変なことになった経験があったのです。技術の粋を集めた「テスト蒸留」から「本蒸留」へ結晶化によるトラブルを防ぐため、今回は改めて蒸留方法を精査し、まずは小型蒸留機でのテスト蒸留からスタートしました。冷却水の温度や量のコントロールが非常にシビアで、作業中は完全に付きっきり。常時、指先で水温を細かく測りながら、最適な条件を見極めていきました。このテスト結果をもとに慎重にシミュレーションを行い、ご依頼主様へご報告の上、いよいよ本蒸留(本番)へと進みました。届いたのは、段ボール3箱分に詰められたクスノキの角材。 トラックから荷下ろしされた瞬間から、濃厚で爽快なカンファー(樟脳)の香りが段ボールを突き破って周囲に広がります。「これは素晴らしい香りになる」と確信しました。一気にチッパー機で細かく砕き、初回の蒸留を開始。 水温調節の難しさは相変わらずでしたが、スタッフ間で状況、条件、注意事項を常にリアルタイムで共有し、感覚を研ぎ澄ませてクリアしていきました。510mlの精油が紡ぐ、次の物語厳しいプロセスを経て採取できた精油(エッセンシャルオイル)の量は、なんと510ml! また、同時に採れた芳香蒸留水はアルミパウチに小分けし、10袋を納品させていただきました。完成した香りは驚くほどフレッシュで瑞々しく、クスノキの大木が太陽の光を浴びて輝いている姿が目に浮かぶようでした。この瞬間、いつも私たちの心はグッと満たされます。何十年もの間、人の暮らしを静かに見守り、世代の移り変わりを見届けてきた木々たち。そのすべての記憶が「香り」として蘇り、形を変えて再び人を癒してくれる。木と人が共に生きてきた時間を、五感で受け取れる瞬間です。最後に成果物をお届けした後、ご依頼主様からすぐに到着のお知らせと大変嬉しいお言葉をいただきました。 先ほど無事到着しました。さっそく開封、ドキドキワクワクしながらクンクンしました。テストの時より格段にいい香りに驚いています。(わたくしごとですが・・・)実家(母が最期まで暮らしていました)の記念にとお願いしたものですが、母にもクンクンさせてあげたかったなぁとしみじみ思い、ちょっとうるうるしてしまいました。福井さまはじめスタッフの皆さまに心から感謝です。納品した芳香蒸留水は、お母様のご友人や知人の皆様にもお裾分けされる予定だそうです。 クスノキのイキイキとした香りが、皆さまの心にある大切な想い出と重なり合い、形を変えて次の役目を果たしていく。そのお手伝いができたことは、私たちスタッフにとっても大きな誇りであり、貴重な経験となりました。また、納品の際に緩衝材として使用した天然ヒノキの鉋屑(かんなくず)も、ご依頼主様に大変喜んでいただくことができました。「資源を余す所なく使いたい」という私たちの想いがしっかりと伝わったことが、何よりも嬉しかったです。今回のご縁に心から感謝いたします。ご依頼いただき、本当にありがとうございました。この文章の著者:福井 千寿子富山県出身。自営業の傍ら、週末に山の手入れを行い、兼業農家であった祖父の背を見て育つ。里山での生活で、自然と共に暮らし、美しい景観を見ながら生活できることに何よりも豊かさを感じている。樹木の持つ心地よい香りと、何千年と生きる種の力強さに魅了され2020年よりアロマセレクトのブランドマネジャーに就任。アロマセレクトについて私たちアロマセレクトは、“Made in 富山”にこだわり、地元・富山県の豊かな森の恵みから丁寧に香りを抽出し、精油を生成しています。美しく豊かな自然を守るため、アロマセレクトでは間伐材を使用した精油を抽出。森を守る木こりさんと共に健やかな森を保つための山の管理にも貢献いたします。次世代へ豊かな自然を残していきたい。たとえ小さな一歩でも、できることから取り組んでまいります。