健全な森林の育成に欠かすことのできない間伐。本稿では、間伐材を使用した精油を抽出する私たちアロマセレクトが、間伐によって生まれる「間伐材」が抱える課題や誤解を解説しつつ、利用法・使い道の事例をご紹介します。間伐とは森林は、国土の保全・水源の涵養・生物多様性の保全・地球温暖化の防止・林産物の供給などの多面的な機能を発揮しています。ただし、これらの機能を維持・向上させるには「間伐」を含めた適切な森林整備が重要です。<森林整備の流れ>植栽苗木を植え付ける下刈り植栽木に日光が当たるように雑草木や低木を刈り払う除伐植栽木の成長を妨げる雑木や形質の悪い植林木を取り除く枝打ち植栽木を成長させるため、節を残さないために余分な枝を切り落とす間伐樹木の成長に応じて一部の植林木を伐採し、立木密度を調整する主伐伐採し、木材として利用する※伐採後に再び苗木を植えることで森林が適切に更新されます。間伐とは、樹木の成長に応じて一部の植林木を伐採し、立木密度(1ヘクタールあたりの木の本数)を調整する作業です。立木密度が小さくなることで、日光が森林の地表面に届くようになり、下層植生の発達が促進され、森林の持つ多面的機能が増進します。例えば、水源涵養機能や土壌保全機能が向上することで、風害や山地災害に強くなります。また、木材の生産を目的とする人口林において、間伐は「木材の利用価値を高める」ための重要な作業にも位置付けられるものです。間伐を行うことで残された樹木の健全な成長を促します(間伐が行われないと、密集した樹木が互いの成長を阻害し、形質不良になってしまいます)。参考:間伐とは?|林野庁間伐の方法間伐方法は「定性間伐」と「定量間伐」の2つに分けることができます。「定性間伐」は選木を重視する間伐方法です。下層木(劣勢木)を中心に間伐する下層間伐と、上層木(優勢木)を中心に間伐する上層間伐があります。「定量間伐」は選木を重視しない(あるいは 間伐率に基づき機械的に伐採木を決める)間伐方法です。列状に間伐をする列状間伐が行われます。間伐材とは間伐材とは、間伐の作業時に伐採される木材です。貴重な資源を無駄にしないために、持続可能な森林経営を育むために、「間伐材」を利用することが大切です。そのためには、間伐材の搬出・造材・出荷コストの低減、間伐材を利用した木材価格の適正化、間伐材を利用した製品の需要増加、間伐材の活用方法の認知拡大など、様々な取り組みが必要になります。間伐材活用とカーボンニュートラル木は二酸化炭素を吸収し、酸素を放出して、炭素を体内に蓄え、成長します。それはつまり、間伐材や木材を活用することは「伐って、使って、植えて、育てる」の人工林のサイクルを保ち、二酸化炭素(温室効果ガス)の吸収量を増やすことに貢献することを示しています。これはカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)の観点で大きな意味があります。間伐材に対する誤解間伐材に対しては、不要なもの・低品質の安物というイメージを持たれている方もいらっしゃいますが、実際はそうではありません。確かに、下層木(劣勢木)を中心に間伐する下層間伐では品質の劣る樹木が伐採されますが、上層木(優勢木)を中心に間伐する上層間伐では品質の良い樹木が伐採されます。また、定量間伐では様々な品質の樹木が伐採されます。つまり、間伐材は一律に品質が劣るとは言えません(ケースバイケースです)。間伐材の利用法・使い道の事例紹介木という素材を有効活用することは、まさに適材適所(木材の使い分け)です。この適材適所を推し進めることに貢献する観点で、下刈り・除伐・枝打ちを含めた「広義の間伐」の中で生じた間伐材や、これまで有効活用されていなかった樹木の活用事例をご紹介します。家具(カリモク家具)老舗家具メーカーのカリモク家具は、2009年に新ブランドカリモクニュースタンダード(KNS:Karimoku New Standard)を設立。国産広葉樹を有効活用した家具を展開しています。“KNSは素材にこだわっているブランドです。生産量が一定でなく、また均一材料がたくさん採れる巨木が少ないために、効率重視の大量生産には向かないと考えられ、産出量の多くが紙パルプ用のチップにされてきた日本産広葉樹の小径木(里山の木)。KNSの製品は、そんな国産のカエデ・クリ・ナラといった国産広葉樹を積極的に有効活用しています。日本の山岳地帯に生えていた木々は、厳しい環境に適応するため曲がったり、樹皮に傷を負ったりしながら成長します。しかしその木目や色柄、節などを天然素材の持つ「個性」としてKNS では取り入れ、木を知り尽くしたカリモクならではのノウハウとそして高い技術と高い職人技で、高品質な家具として生まれ変わらせました”参考:KNS カリモク ニュースタンダード(KARIMOKU NEW STANDARD)とは|vanilla精油(アロマセレクト)アロマセレクトでは “Made in 富山” にこだわり、地元・富山県の豊かな森の恵み(間伐材)から丁寧に香りを抽出し、精油を生成しています。“爽やかな甘味のある香り。主要成分であるリナロールがリラックスや安眠といった作用をもたらします。含まれる成分が非常に多彩なことから、深みのある香りが特徴です”参考:【精油】クロモジ枝葉|AROMA SELECTストロー(アキュラホーム)不十分な森林管理を問題視し、間伐材の有効活用が必要として考案・製品化された木のストロー。日本で年間約2,000棟の住宅を建築しているアキュラホームでは、古くから木材の製材に欠かすことのできなかった職人技術“鉋掛け(かんながけ)”による薄削りをヒントに、木材を薄くスライスしたものを斜めに巻き上げることで、木のストローに加工することに成功しました(この手法による木のストローの開発・量産化は世界初の取組みです)。参考:木のストロー|アキュラホーム消臭スプレー(エステー)エステーは、北海道トドマツの間伐材から抽出した「機能性樹木抽出成分(樹木水)」を配合した環境に配慮したサステナブルな消臭ミスト「Air Forest Refresh Mist」を販売しています。参考:北海道トドマツの間伐材を活用したサステナブルな消臭ミスト プロ品質のホテル専用品を一般発売開始 「Air Forest Refresh Mist (エアフォレスト リフレッシュミスト)」を新発売|エステー食器(hide kasuga 1896)hide kasuga 1896は、長野県産の杉の間伐材と、バイオプラスチックを50%ずつ混ぜ合わせた新素材を開発。この素材が使用された食器には軽くて丈夫で、木のぬくもりも感じられる特徴があります。“林業関係者にとっても、間伐材を活用した食器は画期的でした。春日さんの会社には、直径が14センチ未満の、細く曲がった間伐材を中心に納めているといいます”“細い木材は、山を育てていくために木を間引きする段階で出てきます。これまで付加価値がつかなかったものに価値をつけていただくことで、細ものでも山にお金が返るということになれば、森林の整備も進むと思います”参考:間伐材×バイオプラスチック 「循環型経済」体現する新素材|NHKご案内私たちアロマセレクトは、“Made in 富山”にこだわり、地元・富山県の豊かな森の恵みから丁寧に香りを抽出し、精油を生成しています。美しく豊かな自然を守るため、アロマセレクトでは間伐材を使用した精油を抽出。森を守る木こりさんと共に健やかな森を保つための山の管理にも貢献いたします。次世代へ豊かな自然を残していきたい。たとえ小さな一歩でも、できることから取り組んでまいります。アロマセレクト オンラインショップはこちらこの記事の著者について福井 千寿子富山県出身。自営業の傍ら、週末に山の手入れを行い、兼業農家であった祖父の背を見て育つ。里山での生活で、自然と共に暮らし、美しい景観を見ながら生活できることに何よりも豊かさを感じている。樹木の持つ心地よい香りと、何千年と生きる種の力強さに魅了され2020年よりアロマセレクトのブランドマネジャーに就任。山と木を愛する以外は全てにおいて平々凡々。